「じゃあ、わかったよ。わたし、とびっきり優しいからさ。あんたなんかのためにもう1つお土産買ってきてあげたの」

わたしが弟用の靴下が入った袋を探していると、弟は「今度はまともだろうな」と本気のトーンで言った。

「まともなんてもんじゃないよ。実用性抜群、センス最高、通気性抜群の最強土産よ」

わたしの言葉に、「センス最高と通気性抜群が怖えわ」と弟は腕をさする。

最上級の笑顔で靴下の入った袋を差し出すと、弟は時間を掛けて受け取った。

彼はわざとらしいまでに大きく呼吸をすると、中身を警戒しているのかゆっくりとした手つきで袋を開けた。

中を覗くと、「なんか派手なのきた」と呟く。

袋を開けるのに時間を掛けていたのに対し、中身を取り出すのは袋を傾けするりと取り出すという無駄のない動作だった。

すとんと弟の手に着地したジンベエザメを眺め、彼は「まじでふざけんなよ?」と言う。

「全然ふざけてないでしょう。むしろ大真面目よ」

わたしが言うと、弟は深いため息をつく。

「やっぱ、里香にお土産を頼んだ俺が馬鹿だったようだ」

弟の呟きに、今度はわたしが深いため息をついた。

「ああ……どうやら、弟に対して、真剣に、真面目にお土産を選んだわたしは愚かだったようだ」

わたしが再びため息つくと、キッチンから母がやってきた。