弟は「箸かあ……」と言いながら包みを開けた。

そして箸本体を取り出すと、クリーム色で柄のないそれを眺め、無駄とも思えるかわいいパッケージを確認した。

「絵、箸から転写されたのかよ」とつっこむ弟に、わたしは耐えきれず豪快に噴き出した。

ギャハハと自分でもうるさいと感じるほどに笑う。

「うける。どうよ、お姉ちゃんからの水族館のお土産は?」

それなら学校にも持って行けるでしょうと続けると、弟は「お前ぶっ飛ばすぞ」と言った。

その目は本気そのものだが、口元には微かに笑みが浮かんでいる。

「どう、嬉しいでしょ?」

「嬉しいわけあるか。これで喜ぶやつがいると思うか?」

「あらやだ、わたしに言わないで会社さんに言ってくれる?」

「これで喜べるの、土産を買ってきてくれたっていうことに喜べるめっちゃピュアなやつだろ」

「そうだよ。それ、ピュアな心のあの人へっていうキャッチフレーズで売られてたから。

あんた、俺日本で1番ピュアで心の広い男だから、とか言ってたでしょ? ぴったりだと思ってさ」

親指を立てた手とともにびっくりチョップスティックスの説明が書かれている紙を映した

写真を表示させた携帯を弟に見せつけ、

無意識に上がる口角を抑えられないままに言葉を並べると、彼は

「限度ってもんがあるだろ」とため息をついた。