バスを降りてからは、ひたすら歩いた。
駅まで行くためのバス停へは、本来自転車で行くような距離だったのだが、
帰りは買うものによっては自転車では大変だろうということになり、そのバス停まで歩いたのだ。
しかも実際、自転車では帰ることができないくらいの買い物をした。
「薫くん、やっぱりすごいね」
薫くんを追うような形で歩きながら言うと、「そう?」と彼は振り向いた。
歩みを止め、わたしを待っていてくれる。
「だって、わたしじゃ絶対自転車使ってたもん」
「ああ……。忘れてたけど、やっぱり自転車じゃ大変だったね」
わたしが薫くんに追いつくと、彼は「持つよ」と右手を出した。
「いいよ、大丈夫。自分で買ったんだし」
薫くんは「はいはい」と頷くと、わたしが抱えるように持っていたクッキーの箱が入った2つの袋を奪った。
「歩きやすくなった」
ぽろりと本音をこぼしてしまうと、薫くんは「でしょ?」と笑った。
夕焼けの下でその笑顔は反則じゃないですかと心の中で叫ぶ。
そうしているうちに薫くんの後ろにまわってしまい、小走りで彼の背を追った。
「もっとゆっくり行こうか」
「ううん、大丈夫」
わたしの声に、薫くんはやはり「はいはい」と頷いた。