電車のあとのバスは非常に空いていたため、薫くんと2人、1番後ろの席に座った。
流れる景色がわたしに与えるものが新鮮味から安心感へ変わってきている。
ふと、バスによるものとは違う揺れを感じた。
太ももに置いたバッグにうずめるようにしていた顔を上げると、「大丈夫? 降りるよ」と薫くんの優しい声が聞こえた。
自分が眠っていたことに気がつくと同時に、「はっ」と声を出した。
慌てて口元を拭うが、幸い手の甲が湿ることはなかった。
「……ごめん、いろいろ」
「全然。もうすぐ着くよ」
「ああ、うん……」
ずっと起きていたのかと尋ねると、薫くんは眠くならなかったからと頷いた。