その後しばらく悩んだ結果、みいには自分とお揃いの綺麗なヒトデをイメージしたガラス製のストラップを、
両親には水族館限定パッケージのクッキーを購入した。
ちなみに弟には、「びっくりチョップスティックス」以外にもジンベエザメの鮮やかなオレンジ色の靴下を購入した。
左右の靴下に、オレンジ地に青色でジンベエザメが描かれているものだ。
ジンベエザメの靴下は、「びっくりチョップスティックス」で不穏な空気が流れた際に差し出そうと考えたのが購入に至った大きな理由だ。
こんなにもかわいい靴下なのだから、渡されて嫌な気分になるはずがない。
水族館からの帰りの電車内は、ただ運がよかっただけなのか この時間はいつもこのような感じなのか、
行きのときと違って自分のスペースがある程度確保できるくらいの空き具合だった。
わたしたちは立っているが、いくつか空席も確認できる。
「ここからまた長旅だね」
ゆっくりと流れる遠くの景色を眺めながら言った。
「そうだね。大丈夫?」
「全然大丈夫。疲れより、楽しさとか新鮮味のほうが勝(まさ)ってる」
わたしが笑うと、薫くんも「そっか」と笑った。
「薫くんは大丈夫?」
「大丈夫」
どちらからともなく言葉をなくした。
吊り革に掴まることも低身長に許されないために
踏んばっている足が電車の揺れに負けたときに「ごめん」と「全然」の言葉を交わすくらいだ。