その看板に惹かれてそちらへ行くと、たくさんの箸が並んでいた。
「かわいいじゃん」と独り言を発し、大量の箸を眺めていると、
コーナーの右端に一般的なノート程度の大きさの紙が貼られていることに気がついた。
「心の広いあの人に、とっておきのイタズラを」という文字のあとには、
赤いリボンをつけた、ハートの目を持つかわいらしいドクロが書かれている。
その下には、イラストとともにこのコーナーで売られている箸の説明が書かれていた。
「一見オシャレでカワイイお箸。だけどパッケージを開けると……なにも描かれていない、無地のお箸。滑り止め付きで使いやすい――」
周りに人がいないことを確認した上で、1人で小さな声で読み上げた。
実際の文字としては、
カワイイお箸、のあとには音符マーク、
無地のお箸、のあとには感嘆符、
滑り止め付きで使いやすい、のあとには、
再び音符マークが書かれている。
読み上げた直後、無意識に口角が上がった。
弟への土産が決まったのだ。