しばらく歩くと、博物館や科学館の一部のような場所に辿り着いた。
辺りは水色の小さな照明によって他の場所より明るくなっており、透明な柱のようなものがいくつもある。
中では、その水槽によって大小様々なクラゲが泳いでいる。
「クラゲかあ、綺麗だよね」
わたしは水槽に近づき、ガラス越しに指でクラゲを追った。
「クラゲって美味しいんだよね」
わたしが言うと、「えっ?」と少し引いたような薫くんの声が返ってきた。
「クラゲ、食べたことない?」
「えっ、クラゲって食べるもんなの?」
「サラダみたいになって。学校の給食で出なかった? コリコリした、透明な黄色っぽいの」
わたしが説明すると、薫くんは「ああっ」と頷いた。
「知ってる、結構好きだった」
「でしょ? 美味しいよね。あれ、クラゲ」
「へええ……。クラゲ……」
「わたしも初めて知ったときはびっくりしたよ。『えっ、あの綺麗なやつだよね?』って、何回か聞き返した覚えがある」
わたしはふわふわとおよぐクラゲを指で追いながら笑った。