一目惚れしたベルトを購入し、近くの和風な服屋に入店した。

黒を基調とした店内には、落ち着いた和風な音楽が流れている。


「あっ、甚平」

わたしは黒地に灰色で模様が描かれているものに触れた。

薫くんは「小学校低学年の頃に着たきりだな」と呟いた。

「久々にいかが? 部屋着にでも」

「部屋着ねえ……」

言いながら、薫くんも他の甚平に触れた。

「今なに着てるの?」

「いい感じに歳を重ねたTシャツ。青いの」

「ああ……いい感じに重ねちゃったかあ」

手放したくなくなるやつだ、と言うと、薫くんは「そうなの」と小さく笑って頷いた。

「いい感じにいったやつっていつまでも捨てないよね」

「破れるまで着るね」

「すっごいわかる。ちょっとの穴とかじゃ絶対捨てないよね」

「捨てない」

「もう本当、薫くんがいろんなものを持って男子に生まれ変わった自分としか思えなくなってきてるんだけど」

「俺も。かわいい女子に生まれ変わった自分みたい」

「ちょっ……」

やめてよ、と甚平を見る薫くんの腕を叩いた。

「なんか……自分の顔で焼き肉ができそう」

わたしが真面目に言うと、薫くんは「真夏のボンネットで目玉焼きができるみたいな」と笑った。