再び部屋のドアが開けられたのは、宿題を再開した直後だった。

「にいやん」と1階で聞いた弟くんの声が後ろから聞こえる。

振り返ると、声の主である綺麗な顔立ちの男の子がいた。

「リビングにあったお菓子知らない?」

弟くんの声に、薫くんは宿題を進めながら「知らない」と返した。

少しして、あれっ、と呟く。

「コンソメ?」

薫くんの問いに、弟くんは「そう」と頷く。

「なら昨日食べてたろ。『のり塩あるからコンソメ食っちゃおー』って」

「あっ、そういえば……」

そんな気色悪い言い方してないけど食った気がする、と弟くんは呟いた。

「てか誰、この人?」

弟くんはわたしを指さして言った。

薫くんは「人様を指さすな」と注意してから、「彼女」と一言で返す。

弟くんはふうんと興味なさげに頷いた。

「かわいいじゃん」と残して部屋のドアを閉める。

「ぐへへ」と笑いをこぼし、「君のほうがずっとかわいいよ」と閉められたドアに話し掛ける。