薫くんの部屋は、隙間のないでかい本棚があるシンプルな部屋だった。
本棚の他には、程よいサイズのテレビと、ベッド、勉強机と部屋の真ん中には正方形の白いシンプルなテーブルがある。
「本棚すごいね。図書館みたい」
ほとんど無意識にこぼれた言葉に、薫くんは「もう1個欲しいと思ってるんだけどさ」と言った。
「ここからまだ本増やすの?」
「欲しいのは結構ある。本屋とか行くと毎度いいの見つからない?」
「いやあ……。そもそも本屋なんていう小難しい場所に行かないから」
「そうなんだあ。本屋は楽しいよ? 1日くらい余裕でいられる」
「へえ……。すごいね」
何気なく本棚の隣の壁に目をやると、根気の塊が2つ、金色の額に入り飾られていた。
「なにこれ……パズル?」
「ああ、うん」
「真っ白と真っ黒……。地獄だ。わたしなんて絵があったって完成したことないのに」
完成までどれくらい掛かったかと尋ねると、詳しくは覚えていないがそんなに掛からなかったはずだと返ってきた。
しばらくその純白と漆黒のパズルを眺めていると、そういえば、と思った。
薫くんの性格について、一部の女子の間では実はめんどくさがりだと囁かれていたが、全くそんなことないじゃないか。
本物のめんどくさがりは、パズルなど少し組んだところで放置し、二度とそれに触れることはないのだ。