薫くんは、鍵を回し茶色いドアを開けた直後に「うわあ……」と呟いた。

「どうした?」と尋ねると、「ギャハハハ」という楽しそうな子供の笑い声が聞こえた。

「……どうする、図書館行く?」

「いや、荷物受け取らないと」

薫くんが平気ならわたしは大丈夫だよと言うと、「まじでクソうるせえよ?」と

友達という言葉で繋がっていた頃のような言葉が飛び出した。

「全然大丈夫。弟さんでしょ? わたしもいるから、同じようなの」

薫くんは「そっか」と頷くと、「入って」と先に中へ入った。

綺麗に揃えられたそばに散乱する1足の靴を、薫くんは器用に靴を履いたままの足で揃える。

わたしが「ははっ」と笑うと、薫くんは「弟のね。知らない子のは流石にやらないよ?」と笑った。

「わかってるよ」と笑い返し、「失礼致しやす……」と家の中へ上がった。