「ああそうだ、ジャージ」

忘れてたよ、と笑ってジャージの並ぶ棚のほうを向き直った。

「やっぱりなあ……黄色は決定かな」

黄色は前から欲しかったし、と独り言を言い、黄色のジャージを手に取った。

「何着買うの?」

「うーん、3着くらい?」

多すぎるかな、と続けると、薫くんはそんなことないんじゃない?と言ってくれた。

「気に入ったものって一気にいくつか欲しくなるもんだし」

「なんかもう、薫くんがかっこいい男子に生まれ変わった自分みたい」

わたしの言葉に、薫くんは少し照れたようなかわいい笑顔を浮かべた。

素敵な笑顔に加え、下唇を噛むようにして八重歯をも見せつける。

王子様、それは反則ですと心の中で叫び、カラフルなジャージへ視線を逃がした。