リビングに顔を突っ込み時計を確認すると、昼食を兼ねた朝食を摂る時間など残されていなかった。

あのクソガキのせいだという苛立ちを吐き出すように思い切り舌打ちをし、洗面所へ走った。


洗面所には、鏡の前で当たり前のように歯を磨く弟がいた。

「ちょっとあんた、一体全体どれだけ我の邪魔をすれば気が済むんだ」

再び募った苛立ちを舌打ちにして吐き出してから言い、

小学生レベルの小さな足で背伸びをし、短い腕を限界まで伸ばして指先でなんとか歯ブラシと歯磨き粉を取る。


「そういえばお前、なんで今日そんな似合わねえ服着てんの?」

弟に歯を磨きながら言われ、「えっ、似合わない?」と返す。

「里香にそんなかわいらしい服装似合わねえだろ」

明らかに馬鹿にした声が返ってきて、他の人より小さい拳で思い切り弟の背中を殴った。


弟の言うかわいらしい服装というのは、

白地に大きな緑色の四つ葉のクローバー、その下にピンク色で「HAPPY」というロゴと感嘆符が描かれたタンクトップに、

下は黄色い無地の短パンというものだ。

短パンの裾には、オレンジ色のスマイルのアップリケがついている。


わたしに背中を殴られた弟は顔を歪ませて唸り、さっさと口をゆすぐと洗面所を去った。


わたしは1人になった洗面所で、

「去るタイミングが馬鹿なんだよ。

ちょっとは低身長な姉を気遣いなさいよ、このバリアフルの塊が」

と呟いてから歯ブラシを口に入れた。