「ええ……嫌?」
「嫌じゃないけど、里香が大丈夫?」
「わたしは平気。1人で行くのは面倒が臭すぎたけど」
それで、薫くんがいたら楽しいかなあ、って、と女の子らしさを意識して言うと、薫くんは「嬉しいけど」と笑った。
「わたしね、ジャージを買わなきゃいけないの」
「へえ」
「知ってる? 2本線のジャージ」
「ああ、白い線入ってるやつ。中学のジャージがそんなだった」
「そうなんだあ。ああ、であの……」
自転車で1時間近く掛けて最寄りのディスカウントストアに行きたがってる女をどうするかと尋ねると、
「付き合うよ」と優しい声が返ってきた。
「やったあ。いやあ、かたじけねえ。いつがいい?」
「明日にでも行く?」
「じゃあ、うん」
「おっけー。昼頃にどっかで待ち合わせるか」
「そうだね。薫くんの家のそばってなにがある?」
「服屋がある」
「あっ、そうなんだ」
みいの家と同じほうだなと思った。
「学校までも遠くない?」
「30分くらいかな」
わたしの倍以上も歩いてる、と思い、「わたしその半分以下だよ」と笑った。
「あー、じゃあ、お昼頃に服屋で待ち合わせる?」
「おっけ。……里香遠くね?」
「大丈夫。どうせ方向同じだし」
「そうか。じゃ、また明日」
「うん。ありがとね」
ばいばい、と言って電話を切った。