夏休みに入ると、その少し前に教えてもらった番号を呼び出すのが日課のようになった。
大量に課せられた宿題を教わるためだったり、会える日を訊くためだったりで掛けているうちに、
日課という言葉が似合うようになってしまったのだ。
冷房のきいた快適な部屋で、今日も右耳にコールを聞いている。
「もしもし」
「あっ、薫くん。今 大丈夫?」
「うん」
「今度、近いうちに空いてる日ある?」
「今日でもあすでも明後日でも」
ははっと笑う薫くんにつられてふふっと笑い、「今度、また遊びに行かない?」と言った。
「いいよ。どこがいい?」
「どこだろう」
3秒ほどの沈黙のあと、「これだから田舎は」と同時に発した。
「近場が自転車で1時間前後だから」
「そうそう。友達の家に遊びに行くだけで平均30分自転車漕ぐからね」
「な。田舎者って結構……」
「頑張ってるよね」
はははは、と2人で下手くそに笑う。
そして、自転車で1時間という薫くんの言葉で思い出した。
「あっ」と声を上げると、「びっくりしたあ……」と学校でよく聞く声が返ってきた。
「わたし、あそこ行きたい」
「どこ?」
「あの……総合ディスカウントストア」
「ああ、あそこね。……え、ちょっと待って」
くそ遠くないか、と薫くんは笑った。