5時間目の国語はぼんやりとやり切り、

6時間目の物理では、普段はそんなことしないくせに、薫くんに助けを求めてみた。

緊張や恥ずかしさを隠し、笑顔で「ありがとう」と言うと、

薫くんは少し唇を噛むようにして、控えめな八重歯を覗かせたかわいらしい笑顔で首を振った。

勉強を教えてくれるくらいならば、薫くんにとってわたしは

大嫌いな女子生徒といった存在ではないはずだと思いながら教室へ戻った。

大嫌いなのに感じよく勉強を教えてくれるのは優しさではないと思っている。

それはむしろ新手の嫌がらせだ。


教室に生徒が揃うと同時に帰りのホームルームが始まり、スムーズに進んだそれは10分前後で終わった。

帰りの挨拶を済ませると、クラスメイトたちはだらだらと教室を出ていく。

みいは鞄を肩にかけると、頑張れと口を動かし、笑顔を残して出入り口のほうへ向かった。