翌朝、着替えを済ませ、くしゃみをしてからリビングへ入ると、
やはり弟に「里香のくしゃみってまじうるせえ」と言われた。
「朝からくそがきまじでうぜえ」と返し、テレビの前のソファに腰掛ける。
「ねえ里香、今日は? ご飯」
「要らなあい」
「もう……。お弁当は食べてるんでしょうね?」
「食べてるよ。今は恋煩いじゃ」
キッチンにいる母に言うと、弟は「ぶっ」と大袈裟なまでに噴き出した。
「なによ」
「いや、こっちのセリフだし。里香お前、恋したの?」
うけんだけど、と言ったあと、がははと豪快に笑う弟に舌打ちし、
「わたしだって恋くらいするし。あんたと違って馬鹿にした目以外でも他人を見られるからね」
と言ってやった。
「うーっぜ」と言う弟に「どっちがよ」と返し言い合っていると、母はやはり「仲よくしなさい」と言い、カフェの軽食のように盛った料理を運んできた。