「なんかさあ? 翔ちゃん飽きっぽいらしいし、あたしは翔ちゃんにとって3人目の彼女でしょ?

いつ振られるかもわからない状態で一緒にいるくらいなら、先に振ってやったほうが自分のためかなあ、みたいなさ。

そんなことを思ってると――」

結末を溜めたみいが言う前に、「いたんだ」と言った。

「そうなの。いたのよ、翔ちゃんよりいいと思えるような人が」

「へえ、よかったじゃん。ちなみに誰?」

「ええっとお、えっとねえ……」

みいは、ちらりとわたしの右斜め後ろ辺りを見た。

つられるようにそちらを振り向くと、珍しく1人の男子と2人でパンをかじる薫くんがいた。

彼の机にはノートが開かれており、その机の隣で友達と思しき男子生徒がパンをかじっている。


「えっ……薫くん?」

身を乗り出し小声で尋ねると、「違うよ」と普通の声量で言われた。

「えっ、ていうか里香……」

そこまで言うと、今度はみいが身を乗り出た。

口元に手を添え、小野寺くんのこと好きなの?と嫌な笑みを浮かべ、嫌な声で訊いてくる。

ここ数日、日増しに薫くんの存在が大きくなっていて、なんと答えたらいいのかわからず黙っていると、

みいは「好きなんだ?」と大きな声で言った。

「は、はあっ?」

急いで反論を探していると、みいはその間に「小野寺くんのこと」と続けやがった。

「ちっ、違うよ? べつに……」

絶対薫くんに聞こえてるじゃん、と思い右斜め後ろを見てみると、薫くんは

一緒に昼食を摂っている男子にからかうような笑顔でなにかを言われていた。