6月も、残りより過ごした時間のほうが長くなった頃。

昼食中、みいは「はっ」と短く息を吐いた。


「どうした?」

わたしはいつもと同じ、餃子むすびを手に話し掛ける。

「あたし、翔ちゃんと別れた」

みいの言葉を理解するのに、結構な時間を要した。

「……はいっ? 別れた?」

「うん……」

「なっ、な、なんで?」

ラッブラブな生活を送っていたはずの2人の意外な破局事件に、何度も言い直して訊いた。

「えっ、カケルのこと、本気で振ってやろうと思えたの?」

「ていうかあ、昨日あれ、ちょっと前に里香と行ったファミリーのレストランあるじゃん?」

「うん」

「そこに、昨日翔ちゃんと行くって約束してたのよ。だいぶ前にね。だけどなんか、そういう気分じゃなくなったとか言ってさ」

「カケルが?」

「そうそう。んでまあ、1人で糖分摂取したわけだけど……。ちょっとひどくねえかと思って、振ってやったって感じ」

「ああ、そうなんだ……」

ははっ、と苦笑を続けた。

甘いものを、大好きを通り越して愛しているみいならばありえる理由かなとも思ってしまった。

彼女は、甘いものを愛しすぎるあまり、甘いものを食べる環境にまでこだわりたい人だ。

加えて、約束を守らない人は大嫌い。

つまり、甘いものを食べに行くという約束を交しておきながら、

そういった気分でなくなったなどというふざけた理由でその約束をその日になって断ったカケルは、

相当なことをしでかしたということだ。