「聞こえちゃうよ? 周りに」

「誰がこう仕向けたのよ」

「べつに仕向けたわけじゃないよ。里香が勝手にムキになっただけだって。

まるで、『わたしは小野寺くんが大大大好きなんですう』って言うみたいにね」

みいはアニメのキャラクターのような声を挟んで言うと、綺麗なウインクを付け加えた。

「だからなんでそうなるのっ。違うからね? 絶対変な噂流すんじゃないよ?

この学校、たけのこみたいな勢いで噂が成長するんだから。あるとき十分大きくなってると思っても、数十分後にはもっと大きくなってる、みたいな」

「噂を流すな、か。どうしよっかなあ?」

意地悪な笑顔を見せるみいを睨み、「恨むぞ?」と言うと、彼女は「わかったわかった、やめとくよ」と苦笑した。

「里香の恨みはちょっと特殊そうだからね」

「お主、決して変な噂を流さぬと誓うかい?」

「ええ ええ、誓いますとも」

わたしの問いに頷くみいに「よし」と返し、餃子むすびを頬張った。