時々、一瞬にして10分ほどの時間が経っているという不思議な現象に見舞われながら過ごしていると、楽しみにしていた昼休みは訪れた。


「そういえばさ、小野寺くんといい感じになってるよね」

大好物の餃子むすびを頬張ったとほぼ同時に、向かい側にいるみいが言った。

「……えっ?」

「なんかさ? 2人でなにかを競うようなことしたりさ? 楽しそうじゃん」

「……べつに、楽しいけど、そういう……」

自分の伝えたいことに最も近い言葉を探していると、みいは「ああわかったわかった」と手を振った。

「要は――」

みいは少し乗り出し、自身の口元に手を添えると、「好きなんでしょ? 小野寺王子のこと」と囁いた。

「なにを言う、全っ然違うし。わたしはただ、手伝わされて――」

わたしが少し大きな声で反論すると、みいは自身の唇に長い人差し指を当て、口から「シーッ」と音を出した。