お店に入ると朝倉くんは手を離し、ごめんねと言うと、私を見て申し訳なさそうに言った。


『おれ余計なことしちゃったかな…………』


そうボソッと呟いた。その表情に私は胸が締め付けられた…………。




…………………




私は無言で首を横にふった。




その時、私は自分がついた嘘に激しく動揺していた。

そして、その動揺は、はやくも後悔という形で私を襲ってきた…………。




『大丈夫……?』




朝倉くんがそっと私の肩に手をおき、優しく声をかけてくれる。




「…………大丈夫」




そう言って私はゆっくりと、朝倉くんの手から離れた。



そのまま、私たちは無言で席まで戻った。












席に戻ると、朋子が心配していたが、朝倉くんと戻ってきた私を見ると少し驚いたような顔をしていた。





『大丈夫?なんか気分悪くなったみたいって聞いたけど。』



「…………あ、うん。もう大丈夫。」




そう言うと朋子は安心したように微笑んだ後、私の横にいる朝倉くんを見た。



『あっ、ごめんごめん。私、場所変わるね。 』



朋子は私の顔を見て微笑みながら、席を移動していった。



「え、あの朋子…………」













私と朝倉くんはまた、隣同士に座った。







私は黙ったまま、じっと目の前の食べ物を見つめた。





こんな瀬野尾くんからの卒業の仕方に、自分で自分が情けなくなった……



あの時の瀬野尾くんの顔が忘れられない。



モヤモヤしたものが胸に詰まり、息苦しかった。




悔しいとかツラいとか

寂しいとか苦しいとか

もう何がなんだか分からない感情に、大声で泣き叫びたくなった……