そんな他愛のないやりとりをしている時だった。





ーーー おおー来た来た!

ーーー あっ、瀬野尾くんーー!

ーーー おっせーぞ、瀬野尾!





と入口のほうで歓声があがった。
私は反射的に声の方を見た。


そこにはニコニコしながら、みんなにハイタッチしている瀬野尾くんがいた。





……瀬野尾くん






瀬野尾くんは入り口付近で捕まると、そのままそこに座り込み、みんなと楽しそうにお酒を飲み始めた。





私はその様子を黙って見ていた。











『瀬野尾。変わらないなあいつー。』



………………



『ねっ。』



………………



『ん?どうした?』



朝倉くんに肩をポンと叩かれて我にかえった。



「え、えっ。あ、お酒飲む?何か頼もうか?」



朝倉くんは少し不思議そうな顔をしていたけれど、すぐににこやかな笑顔になった。



『おっけー!メニュー表、メニュー表ー!』



嬉しそうにドリンクメニューを見はじめた。しばらくすると、これこれ!と言って嬉しそうに指をさす朝倉くん。


「ん、どれ?」


“キャット・アイ”


『ね!なんかさぁ名前がカッコいい(笑)』



朝倉くんが選んだのはカクテルだった。こんな可愛らしいお酒をチョイスしてしまう朝倉くん。もう、本当にギャップありすぎだ。



「ふふ、可愛いお酒飲むんだね」


『えー、ダメ?いいじゃん、いいじゃん飲もう!』



そう言うと朝倉くんは手を大きく振り回した。



『はいはーい!すいませーん!ドリンクいいですかー!』



って元気よく叫んだ。

その声があまりにも大きくて、店員さんだけでなく周りのみんなが一斉に朝倉くんを見た。




瀬野尾くんも。




私は瀬野尾くんと目があった。




なぜだろう、私はすぐさま瀬野尾くんから目をそらしてしまった。



店員さんが来た。みんなはまたそれぞれの会話に夢中になった。



朝倉くんが店員さんにドリンクを注文しているとき、私はチラリとまた瀬野尾くんのほうを見た。



そこにはじっとこちらを見つめる瀬野尾くんがいた。



その目がどこか哀しげにみえた私は、慌ててまた瀬野尾くんから目をそらした。




なに…………