カメラをカバンにしまい、帰り支度が出来た瀬野尾くん。




『帰ろっかー。俺はこの後、友達と後夜祭に行くけどどうする?』







瀬野尾くんの優しい声……

私も一緒に後夜祭に行きたい……
もっともっと瀬野尾くんと一緒にいたい……

などど身分不相応なことを一瞬でも思ってしまった。








「あ、私はこれで帰る……」





すると、少し間があって





『そっか』





そう言うと、瀬野尾くんは私に歩みより、私の頭に手をおいてクシャっと一回撫でた。





そして、手のひらを私の頭に乗せたまま、私の顔をのぞき込んだ。





『お・つ・か・れ・さ・ま』





瀬野尾くんは、今まで聞いたことのない、とてもとても優しくて甘い声で囁いた。




そして、手を離すとゆっくりと教室から出ていった…………













しばらく私は動けなかった……
瀬野尾くんの手で、頭を撫でられた…………




そして、あの甘い声……
溶けてしまいそうな声……








耳に残って消えないその声は
私の体中を痺れさせた……