やっぱり…………
そろそろ帰ろっかな……
胸に詰まるものを感じながら、学校に背を向けて歩き出した。
『まってー』
瀬野尾くん?
私は声のする方を見た。
瀬野尾くんが走って来ている。
瀬野尾くん…………嘘じゃなかったのね。
瀬野尾くんは私の前まで来ると、ハァハァ苦しそうに息をし膝に両手をついた。
『ご、めん…………寝坊した~』
え……
さっきまで騙されたのではと、少しでも瀬野尾くんのことを疑っていた自分がとっても恥ずかしかった……
「ごめんなさい」
私も瀬野尾くんに謝った。
『へっ?』
瀬野尾くんは不思議そうに私を見た。
そして可愛い目をくりっとさせて言った。
『ねっ、なんで制服着てるの?』
「え?だって学校で待ち合わせっていったから……」
あれっ、そういう瀬野尾くんは確かに私服だ。
細身のブルージーンズに白のTシャツ。上に羽織っている黒のサマーブルゾンは肘までまくり上がっていて、瀬野尾くんの細くて白い腕がむき出しだ。
私にはその腕がとても色っぽく見えた。
私服の瀬野尾くんを見たのはこれが初めてだった。
いつもと違う瀬野尾くんを見た気がして私はドキドキしてしまった。
プッ……!
瀬野尾くんが突然、噴き出し笑いだした。
え…………?
『休みの日に制服着てくるなんて、かわいい~』
…………
『じゃ、いこか~』
……今、かわいいって……
こんな言葉、今まで生きてきて、親以外に言われたことの無かった私はどう受け止めていいのか戸惑った。
私の心臓は次から次へと、瀬野尾くんから刺激を受けドクドク、ドクドク激しさを増していった。
そんな私のことお構いなしに、瀬野尾くんはずんずん歩いていく。
私は慌てて瀬野尾くんを追いかけた。
どこに行くのか分からなかったけれど………
私は黙って瀬野尾くんの後ろを、3歩下がってついていった。