私は瀬野尾くんにお礼を言ったほうがいいのか迷ったが、いちおうそれらしきことは伝えておこうと瀬野尾くんの後を追った。



「あ、あの瀬野尾くん……」



『あー、お疲れ様~』



瀬野尾くんはダルそうに伸びをしながら、私の方に体を向けた。



『……あ、あのさっきはありがとう』



恥ずかしくて、きっと蚊の泣くような声だったにちがいない……



それを瀬野尾くんは聞き取れたのか、そうでないのか目をくりっとさせ、不思議そうな顔で言った。




『んー? なんのことー?』




と………。




そしてそのまま、おつかれ~と言って、あくびをしながら教室から出ていってしまった。







きっとこの時からだ。私が瀬野尾くんを意識するようになったのは……