桜は明くる日も明くる日もひたすらに機を織り続けた。
儚い紅葉の葉のように琉の命を散らせはしない、そう思いながら…。

季節は流れ、夏の終わりを告げる鈴虫がリンと鳴く。秋になってしまったようだ。
桜は機を織りつつも琉の看病もしていた。

「…綺麗な指だね…」

桜の傷だらけの指を見て琉は呟いた。その声は弱々しく、でも桜を労わっているように感じられた。

「いつか、綺麗な指が無くなっても、それでも、私を愛してくれますか?」

桜は後ろから琉を抱きしめ、涙が溢れそうになるのを耐えながら問うた。

「当たり前だよ…」

琉は咳き込みながら桜の傷だらけの指を大きな手で包んだ。
その手はあまりにも冷たくて桜は涙を堪えきれなかった。
嗚咽が出そうになるのを耐えながら静かに琉の背中で涙を零していた。