昼時、桜の膝枕で琉は横になっていた。
なんてことのない幸せで、穏やかな一時。それが桜にとってはこの上ない幸せだった。

「琉、いつか私が綺麗な声を出せなくなっても、それでも私を愛してくれますか…?」

琉の頭を撫でながら桜は問うた。

「当たり前だよ。たとえ君の声が枯れ果ててしまっても僕は桜を愛するよ」

琉は微笑みながら桜の頬を優しく撫でた。
桜の目には涙が浮かんでいた。

「泣かないで、桜。君に泣かれたら僕はどうしていいかわからなくなる」

琉が親指で桜の涙を拭った。
桜は琉の頭を撫でていた手を自分の頬に触れている大きな手に重ねて言った。

「幸せだから泣いているの」

この幸せを失いたくない。この時が一生続けばいい。
2人はそんなことを思い、願い続けた。