酷く冷えた冬の夜、2人は身を寄せ合っていた。

「出会った日もこうして雪が降っていたね」

琉が桜を抱きしめ、外を眺めながら微笑み呟く。

「…そうね」

桜はそう呟き、囲炉裏火で火照った顔を琉の着物の影に埋めた。

「春はいつになったら来るのかしら?」

照れ隠しのように桜が話す。

「きっともうすぐだよ。春が来たら何をしようか。桜の花を見に行こうか」

「菜の花も見たいわ。でもあなたと2人で見る景色は、きっとどれも美しいのでしょうね」

「あぁ、そうに違いない」

2人は春の訪れを憧れと共に待っていた。