「桜は僕の全てだ。これまでも、これからも。それはずっと変わらないよ」

桜の涙はもう止まっていた。涙の代わりではないが、今度は頬が紅く染まっていた。
桜は自分を抱いている大きな腕に自分の手を重ねた。

「私も、私もよ、琉。あなたは私の全て。絶対にあなたを失いたくない」

桜と琉の間の空気はかつての幸せで穏やかだった頃のそれによく似ていた。しかし、その空気は長く続かない。

「ゴホッ」

「琉!」

琉の体力に限界が来たようだ。桜は琉を布団の所まで連れて行きそのまま寝かせた。
「さく、ら…」

「あなたは私が必ず救ってみせる。そのために私は羽を失ったの。絶対にあなたを死なせやしない」

琉の手を強く握り、桜は言い放った。その目には強い光が見えた。