「最後の1枚…」

怖くて琉に真実は告げられぬまま桜はそっと1人、最後の羽を織ろうとした。しかし、その瞬間

「桜」

襖が開き、琉が入ってきた。起き上がるのも辛いであろうに立って歩き、桜の元まで来たのだ。そして笑いながら桜を抱きしめた。

「り、琉…」

「綺麗に羽ばたいたあの日の鶴を今でもずっと覚えているよ。君があの時の鶴だったんだね、桜」

そう、桜は鶴であった。機を織るために使っていた羽も己の羽で、空を飛ぶための翼はもう失っていた。
桜の目には溢れんばかりの涙が溜まっていた。

「君がヒトであっても、そうでなくても僕は変わらず君を愛してるよ」

琉が後ろから桜を強く抱きしめる。
桜は涙を止めることができなかった。嗚咽を零しながらただひたすら泣き続けた。