(なんてことを!)

九ケ沼(くがぬま)しいなは開き戸のすきまからとなりの部屋をのぞき、絶句した。

江崎はるかが森本コオに抱きついて、キスを始めたからだ。ふたりはしいなと同じ高校1年生で、部活動も同じ社会クラブに入っている。

しいなが今いるのは、高校の図書館棟にある第2資料室の、さらにその奥にある小さな物置部屋だ。

放課後になって、しいなはクラブ活動で使うバインダーをさがしに、物置部屋に来た。

さがしものの最中に物音がして、森本コオと江崎はるかがとなりの第2資料室へ入ってきた。

第2資料室は主に郷土の地理・歴史の資料、古文書などを棚に並べて保管している部屋だ。放課後は開いているが、利用するのは社会クラブの部員か、歴史や古文の先生くらいのものだ。

森本コオと江崎はるかが入ってきたのも、クラブで使う資料を取りにきたのだろう、と思っていた。

しかしはるかは、しいなが奥にいるのも知らずに、コオに抱きついてキスを始めたのだった。