【彼は嘘つきだ】
思えば嘘つきな彼だった。
「転職するからもう会えなくなる」と嘘をついて、焦ったわたしに告白させたり。「今日会えなくなった」とメールを寄越したのに、実は待ち伏せして驚かせたり。
「おまえは寂しがり屋だから、俺より先に逝けよ」これも。
「俺がよぼよぼのじいさんになっても、しわしわのばあさんのおまえを大事にするよ」これも嘘。
でも、「おまえが好きだよ」という言葉だけは、嘘じゃなかったと信じたい。
目を伏せたら、黒服が濡れた。
(了)
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