「そっかそっか。ならここで問題です」
「はい?」
「俺は今、どこにいるでしょうか」
「はぁ?」
唐突なクイズだった。付き合い始めて二年。こんなに唐突なクイズは初めてだ。
「分かんないけど……会社かな?」
「いーや」
「じゃあ……駅とか?」
「いやいや」
「よく行くラーメン屋?」
「違う違う」
「アパート近くのコンビニ?」
「コンビニの前は通ったけどな」
「うーん……」
「降参するか? しちゃうか?」
「うーん……そうだねぇ……」
というか、ノーヒントでこんなに唐突なクイズ、正解するのは無理だ。会社からアパートまでの間にいないのなら、こっちの地理に詳しくないわたしには答えられない。
粘ることなく降参すると、彼は「フフフ」と不敵に笑う。
そしてどこかのドアを開け、……
「サプラーイズ!」
とにかく元気にそう言ったあと、すぐに「あれ?」と抜けた声を出す。そして少しの間の後再びドアが開く音と「サプラーイズ! ……あれ?」の声。
「ちょっと待て、おまえ今どこにいる?」
その言葉を聞いて、全て分かった。分かってしまった。
彼が今、わたしの部屋にいることを。
会議が長引いているから今週は来られないと言っていたのに。だからわたしがサプライズを仕掛けようと、新幹線に飛び乗ったというのに。まさか彼も、同じサプライズを仕掛けようとしていたとは……。
ああ、嘘吐きたちの末路がこれか。
(了)