【嘘吐きたちの末路】
「ごめん、ちょっと会議が長引いてて。何時までかかるか分からないから、今日はそっちに行けないわ。ごめんな、今仕事立て込んでて。今週はそっち行くの難しいかもしれない」
「そっか、分かった。仕事なら仕方ないよ。仕事しながら毎週末行き来するもの大変だし、今回はやめとこ。わたしも今日は積読本読んでゆっくり寝るね」
電話でそんなやりとりをしたあと、すぐ新幹線に飛び乗った。
彼の転勤で遠距離恋愛になって数ヶ月。毎週末、どちらかが新幹線に乗って会いに行き、一緒に二日間を過ごす、というのを続けていた。
でもお互い仕事があるし、こんなことずっと続けられるわけがない。いつかは会えない週末がやってきる、と。分かってはいるのだけれど。
せっかくここまで続けたのだから、今週末も会いたいという、いわば意地だった。
が。
彼の部屋に着き、夕飯の用意を終えたけれど、いつまで経っても部屋の主は帰って来ない。
良いことも悪いこともあれこれ考え、連絡したほうがいいか、そわそわし始めたとき。
テーブルの上のスマホが震えた。彼からの着信だった。
恐る恐る電話に出ると、聞こえてきたのはやけにご機嫌な彼の声。
「今大丈夫? もう寝た?」
「や、起きてたけど……」
そして歩きながら通話しているのか、靴音がして、それに合わせて少し声が弾んでいた。