誰もいない美術室に着くと、いろんな思い出が蘇ってきた。


特にここでコンクールの絵を描いたこと。


懐かしい。


椅子に座って、その思いに浸っていた。


何分くらいだろう。


10分くらい……かな。


足音が聞こえてきた。


教室とは別館にあるから、誰か目的があってこっちに来ている。


もしかして奈恵ちゃんかも。


こっちに来る人はそうそういないだろうし、何より奈恵ちゃんは私が美術室にいることを知ってる。


そう期待していたのだけれど、裏切られてしまった。



「よかった……まだいた」



……新谷くんによって。



「え……な、んで……」



思いもしなかった人物の登場に驚きを隠せなかった。



「聞こえたんだ。中里が美術室に寄るって言ったところ」



奈恵ちゃんとの会話だ。


新谷くんはその近くにいたんだ。


人でごった返していたからわからなかった。