「新入生代表、挨拶。新入生代表、新谷千晴(しんたにちはる)」
「はい」
名前を呼ばれた男の子は壇上に上がった。
そしてこちらを向く。
___ドキ。
胸が高鳴った。
新谷くんという人は、整った顔つきをしていた。
いや、イケメンというだけではない。
堂々、そして凛とした姿。
大人びているという印象だった。
こんな人は今までに会ったことがなかった。
ワイワイガヤガヤしている環境があまり好きじゃなかったけど、その環境で今まで生きてきた。
そのせいで魅力に感じる人に出会えなかった。
そんな私が目を奪われてしまった。
挨拶が始まったけれど、内容があまり入ってこなかった。
ただ、降壇するまで目で追っていた。
ドキドキという音がなかなか鳴り止まなかった。
私、中里紗(なかさとすず)が一目惚れを経験した瞬間だった。