昔のあたしはね、コンプレックスだったんだ
何でもできる、お兄ちゃんがね
魔法も、学力も、容姿も、それに人望も・・・・・・全て、お兄ちゃんはもっていた
それが羨ましくって、少し遠くからあたしはお兄ちゃんを見ていた
でも、ある日のこと
『彩音!』
『お、お兄ちゃん?!』
今まで数える程しか話したことのないお兄ちゃんが、急に話しかけてきたの
『手伝ってくれ〜!夏休みの課題、終わらないんだー!』
驚いた。勉強は得意中の得意、お兄ちゃんの十八番と言っても過言ではない勉強
それを、夏休みの課題が終わらないということがあるだろうか
ただ、凄いキラキラとした目で見てきたので、つい『いいよ』と了承してしまったのだ
で、お兄ちゃんの部屋に行って、───ついでにあたしの課題も一緒に持ってって───勉強会を始めた
でも、終わらない課題は、あたしでも易々と解けるような、簡単な問題ばかり
応用問題は、既に全てお兄ちゃんによって解かれていた
ああ、なーんだ、って思った
ただ、お兄ちゃんはこれを口実にあたしと話したかっただけなのかなって
これがきっかけで、あたしとお兄ちゃんはよく話すようになったんだ
元々、お兄ちゃんはシスコンで、あたしが話しかけてくれないのが寂しかったらしい・・・・・・けどね?