今は、あたしの正体がどうこう言ってる場合じゃない！

「春香を離して！聖なる水よ、我が手に集まらん。彼の者を清めよ」

その瞬間───

あたしの手のひらから、聖水がほとばしり、女性を包み込んだ

『なにっ』

春香の首を絞める手の力が一瞬弱まる

そこを狙って、聖水を一気に浴びさせた

『ぎゃぁっ』

女性らしからぬ声を上げ、ぱっと手を離す

「けほっ･･････けほっ」

喉に手を置き、小さく咳き込む春香

「治癒よ、全てを癒す者よ！我が魔力を糧とし傷を癒さんことを」

暖かい光が部屋全体を包み込み、春香の怪我を癒した

「あ、彩音･･････？」

「どうしたの？」

呆然とした顔であたしを見てくる

そりゃそうだろうね

あたしが、呪文を唱えて魔法を使い

属性ではない水も使ったんだし

「聖なる光よ、その名を示し、我が声を聞け！我が名に従い、術を受け入れよ！」

大地の魔法とそう変わらない呪文

これも、神級魔法の一つ

光の神級魔法

その刹那

あたしの体から暖かい光が溢れた

部屋全体を包み込み、スカートの裾がはためく

『ぎゃああああああああああ』

激しい絶叫を響かせ、女性は頭を抑えながら消えていった

女性がいた場所に残ったのは、一つのロケット

ふらふらする体を動かしてロケットを開く

そこには、あの女性と、可愛らしい女の子の古ぼけた写真が入っていた

この子が、ひかりちゃん･･････確かに春香によく似てる

くすっと笑うと、なんとなく現状を理解した三人があたしの方に近づいてきた

「彩音？」

「彩音･･････」

「あなた、何者？」

不思議そうな、それでいて怖がるような目であたしを見てくる三人

そりゃそうだよね

突然、あたしが別属性の魔法を使ったらね？