「ありがとう、彩音」

にこっと笑いかけられて、あたしは嬉しくなる

魔法で誰かから感謝されたことって、魔法界にいた頃は無かったからねぇ

新鮮

「三人は動ける?」

こくっと頷く三人

「なら、ここから出よう。花火たちが心配してた」

「そう・・・・・・悪いことしたわ」

ぽつりと杏奈が呟く

罪悪感があるのかもね

結菜も今回ばかりはしゅーん・・・・・・としてるし

あはは・・・・・・

「よし、行こう」

立ち上がって、出入口に向かう

・・・・・・ところで、ひゅっとあたしの前に影が見えた

「?!」

驚いたあたしは、持ち前の運動神経で後ろに飛び退く

突然だったけど・・・・・・この運動神経に感謝だわー

「・・・・・・・・・・・・・・・何者?」

黒い影は、ゆらゆらと形を留めないまま揺れている

まさか、幽霊か?

そう思うと、急に悪寒が走って、怖くなる

こーゆーときは、光を当たるのが一番だけど・・・・・・三人がいる時には無理か

結菜は氷、春香は水、杏奈は浮遊・・・・・・そしてあたしが癒し

まずった

「もう一度聞く。何者?」

そう、問いかけると

『グガ・・・・・・』

まるで機械のような声を発した

どこに口があるのかわからないのに、なぜかこの影から発せられたことはわかる

でも、これで分かった

これは幻影ではない。その可能性はありえない

幽霊確定じゃん・・・・・・

そんなことを思っていた時

急に、影がピタリと止まり、徐々に形作っていく

そして、出来上がったのは────黒髪の女性だった

『おいで・・・・・・おいでぇ・・・・・・・・・・・・・・・こっちに、おいでぇぇぇ』