「ええ、いた」

「いたわよ!」

杏奈はいつも通りで、何故結菜は元気なのか・・・・・・まあ、元気に越したことはないけど

でも、幽霊に遭遇したにしては、元気だね?

杏奈はなんとなーく、わかるけどさ。性格的に

春香は怯えてるよ?

「で、どうしたの?」

「職員室に行ったら、女性がいて・・・・・・おいでって言ってきたから・・・・・・」

ははーん、なるほど

それで、従順な春香は着いてっちゃったと

「そういうこと・・・・・・なんだけど」

ごにょごにょと言葉を濁す春香

どうしたんだろ?

「それが・・・・・・その女性、春香が近づいてきたら、凄い形相で春香の腕を掴んで、『つかまえたぁ』なんて言うのよ」

「つかまえた?」

よく見ると、春香の右手首には誰かに掴まれたようなあざみたいな跡が、手首を一周していた

そこだけ赤黒くなっているので、色白な春香にとってはかなり目立つものだ

「そっか・・・・・・ちょっと貸して」

手首の傷に触らないように春香の右手を掴み、手首に手をかざす

そして、心の中で小さく、「傷よ、我が魔力を糧とし治癒と為せ」と唱えた

無詠唱で唱えるのは、あたしには無理だけど・・・・・・無詠唱は心の中でも唱えないからね

だからこうして、心の中で唱えていくことしかできないんだけれど

そう思っているうちに、あたしの手から暖かな光がほとばしり、春香の傷に触れる

その光が収まった頃には、赤黒いあざは綺麗になくなっていた

「あれ・・・・・・痛くない?」

春香が不思議そうに手首を曲げたり伸ばしたりしている

よかった・・・・・・今日は運がいい

こんなにも連続で魔法を成功させることが出来たなんて、今まで無かったからね