コートを着るには少し暑く、コートを脱ぐと少し肌寒い。
そんな中途半端な気温の夜だった。
4月に入ったばかりで夜はまだ少しだけ冷える。
もっとも、少しぐらい暑くてもコートを脱ぐ気はなかった。
薄いベージュのロングコートの下は制服だ。
夜中の12時を少し過ぎた時間。
高校生が一人で歩いているのを警察にでも見つけられたらとっても困る。
薄暗い住宅街を俯きながら歩くその少女は、ゆっくりと誰もいない公園へ向かった。
思いつめたような、今にも泣き出しそうな顔には涙の跡が残っている。
暖かいような、冷たいような風が少女の長い髪の毛を揺らす。
少女、立川茜は少し乱れた髪の毛をそっと直した。