たしかにそこには、ふたりの先生の姿。保健室の先生は裏庭の焼却炉へとゴミを運ぶ最中だったようで、手にはビニール袋を持っていた。
「あの人、非常勤講師だからって、部活にも顔を出さないでどういうつもりなのかしら」
笹森先輩が呆れ顔。
そういえば藤田先生って、美術部の顧問の先生だって言ってたっけ。
比較的古い先生が多いから藤田先生もそうだろうと勝手に思っていたけれど、どうやら年齢はまだ30代半ばらしい。
「まあ、気持ちは分かるな。だって保健室の先生の色気半端なくね!?」
そんなに大きな声で喋ったら先生たちに届いてしまうんじゃないかってくらいのボリュームで松本先輩が言った。
女の私に色気うんぬんは分からないけれど、美人であることは間違いない。
だって身体測定の時に身長や体重を記入してくれたけど、男子の大半は鼻の下を伸ばしていた気がする。
「でもあの先生、男子と女子の前では態度違うって有名ですよね」
「それって、ただ単に女子が僻んで言ってるだけだろ?」
「はあ……。なんで男ってそんなに単純なんだろう」
「俺は単純じゃねーぞ」
「松本先輩以上に単純な人なんていませんよ」
またいつものように笹森先輩と松本先輩の言い合いがはじまて、不穏だった空気がいつの間にか元通りになっていた。