過去があるから今の自分があって。
自分にとっての過去の全ては、目の前にいる彼によって構成されていると言っても過言ではない。



願わくば、彼にとってもそんな存在であればいいな。

私はそう思いながらも緊張した様子で自分を見ているロイとミアさんを見て、そっと微笑みを浮かべた。



「……ティナ?」


「忘れるって約束したけど、忘れられないかもしれない。……想いは忘れるけど、貴方との思い出は、忘れられないかもしれない」



笑顔を向けると、ロイは驚いたように目を見開いている。

躊躇いがちに私の名前を呼ぶロイに今の素直な気持ちを告げた。



「……」


「――結婚おめでとう、ロイ、ミアさん。心からお祝いを申し上げます。どうか、末長く幸せに」



私の言葉に何か返すべきだと思いながらも何も言えなかったロイを見ながら、私は小さく深呼吸をしてからゆっくりと祝いの言葉を口にする。