そんなロイに対してミアさんは微笑みながら、ほらと見せると、ロイは微笑み返しながら私へ視線を向けて礼を述べる。


それには何も答えることが出来なかった私を見て、ロイは寂しげに笑うだけで何か言うことはしなかった。



とりあえずはこれで私の用は終わったのだろうと解釈したロイが、ミアさんの車椅子に手を添えて押そうとした時。



「……ロイ、ミアさん」


「え……?あ、ああ、何だ?」



私は声を震わせないようにしながら名前を紡げば、名前を呼ばれるとは思わなかったロイは一瞬呆然とするも、はっと慌てて振り返って首を傾げる。


そういえば、再会してからこうして真正面から彼を見るのは初めてかもしれない。



ずっと避け続けてきた。忘れようとしている相手だったから。忘れない内には会いたくないと思っていた。


――でも今思えば、忘れられるはずがなかったのかもしれない。