春、入学式。
新しい制服のブレザーに身を包み緊張した表情の新入生たち。

派手な見た目の生徒
地味な生徒
居眠りをする生徒
背筋を精一杯伸ばしている生徒

そんな多数の生徒の中で一際目立つ少女がいた。


先程まで新入生代表の挨拶をしていた生徒。
柔らかな茶髪ロングにクリっとした大きな瞳
白く細長い手足。

彼女の名前は七瀬澪。
きっと彼女に一目惚れした、生徒は多いのだろう。




「だからーー、その話はもういいから。涼」

「ちぇー」


上のプロローグ調に話してたのは幼馴染みの中川涼。


「涼は澪のことほんとに好きだよねー
まあ、私の愛には負けるけどねー!」

彼女も私の幼馴染みの村上舞。
私たち3人は家が3件隣同士で生まれた頃からの腐れ縁だった。

「もう、二人とも恥ずかしいからやめてよ」

「でも、本当に澪はルックス満点だよね。
しかも、勉強も運動もトップクラスって」

「もう、あれだ!澪は天才ってやつだな。」


完全に幼馴染みバカ。
私としては嬉しいけど、それが周りに知られてたら恥ずかしい。

「あ、私部活行ってくるね!」
「俺もだ。じゃあ行ってくんなー」
「うん、いってらっしゃい。頑張ってね」



こんな風にいつもの3人組で仲良く話してるのは凄く楽しい。
でも、最近それだけじゃ物足りないような気がしてる。


周りを見れば
ある生徒は学業に
ある生徒は部活に
ある生徒は恋愛に夢中になっている。

そんな皆はキラキラして見える。羨ましい。


私にも何か変わったことが起きてほしいな。
私も部活に入ろうかな。
っても、もう、6月だし入ってもなー。


うーん。


ガラガラ
「なあ、七瀬澪ってこのクラス?」

私?私に何か用かな?

「はい、七瀬ですが」

「ちょっと来て。」


なんだろう、なんだか緊張するな。


「あ、俺、蓮見俊。バスケ部1年。」

「そうなんだ、私は七瀬澪です。私に何か用ですか?」

「なあ、バスケ部のマネージャーやんねー?
とりあえず臨時でいいからさ。」


蓮見くんが柔らかに笑いながらそう言う。
丁度部活したかったところだし。臨時なら。

「私で良ければ、やらせてもらうよ。」

「やった!じゃあ着いてきて!」


そう言いながら楽しそうな蓮見くんは私の手を取り






手を......取り......?


「ははははは蓮見くん?!」

「ん?どうかした?七瀬」

「てててて、手が!」

「あ、ごめんつい嬉しくて。じゃあ行こっか」

「う、うん」


私の手から蓮見くんの手が離れた時少し寂しく思ったのはなんでだろう?
久々に人と触れ合ったからかな?

ゴツゴツしてて、なんだか男の子って感じだったなぁ



「今日からマネージャーをしてもらう七瀬さんです」

「えっと、七瀬澪です!よろしくお願いします」


バスケ部って意外と人が多いな...
ちょっと緊張するかも。

「私は2年の相川弥生。マネージャーだよ。この間ちょっと怪我しちゃって、手伝ってくれてありがとう。よろしくね!澪ちゃん」

おお、綺麗な人だ!
マネージャーは相川先輩だけっぽいな。

「俺は部長の蜂屋蒼汰。よろしく!」


そんな感じで自己紹介が終わり、


「じゃあ、まずはランニング30分!
ノルマはグラウンド50周。ノルマを下回ったら追加10周!それじゃ、よーいスタート!」


意外とスパルタだ...相川先輩

「じゃあ、澪ちゃんはこっちで色々仕事教えるから」

「はい!」



「このスクイズにスポドリを入れて置いて。
無くなったらすぐに補給してね。
それと
____
________

って感じでよろしくね!」


意外と忙しいんだな、マネージャー。
頑張ろう!


「終了ー!
ノルマ達成出来なかったのは、この7人ね。
水分補給のあと10周追加ね。」

「うわぁぁぁぁ」


「皆さん、スポーツドリンクです!」

「サンキューーー!」


皆、汗だくだなー。
そりゃあ、あんなに走ったら疲れるよね。


「七瀬、」
「あ、蓮見くん。お疲れ。蓮見くんは持久力かなりあるみたいだね!」

「おうよ!伊達にスタメンじゃねーから!」

「え?!1年生なのにスタメンは入れたの?!凄いね!」


本当に凄いなー。
まだ3年生もいるのにスタメンなんて。
それだけ実力があるんだろうな。

「それで、七瀬どう?マネージャーできそう?」

「うん!皆いい人だし!」

「そっか、なんかあったら言えよ。力になるから」

「うん、ありがとう!」