「ねぇ、待って。
帰るって……あなた。帰る場所はあるの?」

中年女性は、そう言ってきた。

えっ……?

「施設に帰ります……」

本当は、帰りたくないから
泊まる場所を探さなくちゃあ……。

「本当は、帰りたくないのでしょ?
そのまま帰らないと家出になっちゃうわよ」

うっ……気づかれている。

言い当てられドキッとした。

「それは……」

思わず目線を逸らした。
するとその女性は、

「ねぇ、良かったら家に来ない?」

突然そんな事を言ってきた。