「………。」

見れば、分かるじゃない。
靴を揃えて崖のそばに居たら普通は、
自殺願望がある人間だと思うものだが……?

するとその女性が

「ねぇ、あなたは……この景色を何に見える?
綺麗な海かしら?それとも
悲しみで何も見えないのかしら」

止める訳でもなく私に質問をしてきた。

えっ?急に何を言ってくるの……この人。
綺麗な海だなんて……。

私は、言われた通りその景色を見上げた。

すると真っ暗で何も見えなかった景色が
一面に綺麗な海として私の目に映った。

あれ?海って……こんなに綺麗だったっけ?

「フフッ……改めて見ると綺麗よね。
自殺する時は、周りが見えなくなっているから
案外気づかないものよね。
私も経験があるから分かるわ」

中年の女性は、思い出すかのように
クスッと微笑んだ。

えっ……?