えっ……?
今……なんて言ったのだろうか?

「あなたがいいのなら
一緒に家で暮らしてみない?」

聞き間違いじゃない。
この人のは、確かにそう言った。

「家って……そんな無茶な……」

何を考えているの?
会ったばかりの他人を……。

「フフッ……警戒されても仕方がないわね。
確かに無茶苦茶な事を言っているのかもしれないわ。
会ったばかりの他人だし、でもね。
私は、そうだとは思えないの。この日に」

「あなたに会えた事は、
神様のお導きだと思えて仕方がないの。
ねぇ、一度捨てようとした人生。
私に預けてくれないかしら?
きっとあなたにとっても
私にとっても意味があるものだと思うの」

そう言ってきた。

それこそ、無茶苦茶だと思う。
なのに……この人の目は、私を見て離さなかった。

優しそうなのに真っ直ぐで
どこか悲しそうな目だったから

会ったばかりの他人。
怖いと思いつつも私は、差し出された
手を受け取った。

一度捨てようとした人生。
どーせ、死ぬのなら
この人に任せてもいいと思えたからだ。