「宮崎さんは再テストね。」

「ええ!先生もう1回だけチャンスください!もう1回だけ!!」

「ダメ。来週までにもうちょっと練習することね。」
「そんなぁ〜」
「はいはい終わり。」

音楽の時間______
真央の通う学校では、音楽専攻科がないにも関わらず、
1人ずつピアノを弾くというかなり難易度の高いテストがある。

そしてそんな中、美穂はついさっき再テストが決定した。

真央はピアノを弾くことが好きで、テストも無事合格した。

(そういえばピアノは弾けるのかな…?)

それは、後ろに座っている広瀬のことである。

広瀬が転校してきて1週間ちょっと経過したが、
日を増すごとに有名人と化しているような気がした。

昼休みになれば他のクラスだけでなく、

3年生の先輩や入学したばかりの1年生ですら教室を見に来るほど。

言われてみればかっこいいとは思うが、
第一印象であまりにも失礼な態度をとってしまったため、真央は少しためらっていた。

「真央………田中真央。」

「え?」

ぼんやりと広瀬のことを考えていたため、
授業終了のチャイムが鳴ったのにも、広瀬自身が名前を呼んだことも一向に気がつかなかった。


「えっ、何?」
「お前俺に借りがあるだろ。」
「借り?」

「俺の肩貸してやったんだけど。」

「な・・あれは!!」

「ついて来いよ。」

そう言い、真央の返事も聞かずに広瀬は早々と音楽室を出て行った。